序/夜のとばりを降ろす前に
彼の人間、あるいは物が出会った、ということは、双方にとって悪いことでは無かった。青天の霹靂ではあったが、人にとっても物にとっても、幸運な偶然であったと言える。
片方は精神的に疲弊しており、もう片方は肉体的な限界が近かったのだ。
とはいえそれが分かるような間柄でも無く、青天の霹靂と形容するからには当然のごとく双方初対面であった。
だから、特に限界が近かった方が警戒を高めていたのも無理は無く、故にこそもう片方がいとも容易く隙を見せたのが信じがたかった。
「――寝やがった。マジかこいつ、顔も知らない、いかにも怪しい帯刀したヤツを目の前にして眠るか?」
「別に……寝るくらいは良いだろ……見張りも、いるんだし」
見張りはどう見てもいない。誰のことを指しているのかも分からずに、孫六兼元は違和感と倦怠感から解放された身体と、己の本体である刀と、それからすぐ隣でぐーすか爆睡をキメている赤毛の男を見た。
ほとほと人間という物はわからんな、と物語より出でたつくもはため息をつく。
季節は春。霞がかった青い空を薄桃色の花弁が飾っていた。
夜のとばりを降ろす前に
Touken-Ranbu-Tobari-Novel
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