あらすじ
荷物をカウンターにおいて、依頼完了のサインをもらう。鬼の少女は手慣れた様子でサインをすると、ごくろうさん、と荷物を運んできた男を労った。まだ幼い風貌の彼女から出る言葉にしては、いささか年よりじみているように聞こえる。
まあ実際婆さんな訳であるが。なんなら荷物を運んできた年若い姿をした男――龍童もまたそれなりの年寄りである。年齢詐偽にもほどがある。依頼をだしてきたのは島国観光協会の古株である美代という女性で、二つの角と幼い風貌が特徴の鬼である。
「それにしても骨が折れる依頼だったな。何か調べものか?」
「おやあ? 旅人は他人の事情を詮索しないんじゃなかったのかい」
からかうような声に男が舌打ちを鳴らした。眉間にきっかりと皺が寄っているあたり、やってしまったとでも思っているのだろう。まだ昼前の観光協会事務所はがやがやとしていて騒がしく、男の小さな舌打ちなど周りの音にかき消されて消えていった。
「あっはっはっ! 冗談さね、あんたも相変わらずだ。 ……さて、こいつらだが調べ物なわけあるかい。ジャンルもバラバラな本かき集めて何が調べ物だ」
「……言われてみればそうか」
ため息。龍童は不愉快そうに視線をそらすと、そのまま背を向けた。美代に対するいらだちというより、どちらかと言えば己に向けたいらだちのように見えた。
まあ、と美代は目を細める。どうだっていいことだ。美代にも島国にも、もちろん観光協会にも関係が無い。だがここでそのまま帰られるのも困る。わざわざトランスポーターでは無く旅人として放浪する彼に依頼をしたのにも理由があるのだ。
一般に、こういった荷運びの依頼はトランスポーターに依頼する。そういった訓練を受けている者が多く、仕事に比較的村が無いのがトランスポーターだからだ。旅人というのは、あちこちをふらついているだけの根無し草の総称であり、それが何かを担保するような肩書きでは無い。極端な話、浮浪者と何が違うかと言えば、特に何も変わらず、区別も出来ないのだ。
美代が頼んだのは各地に散った希少書物の配達で、中には保存にも気を遣うような希少な書物――ではなく、単純に出回っている冊数が少ないだけの『珍しいだけ』の書物が入っている。内容は殆ど分からない。一部気になる本があるが、それぐらいだ。
「ちょっと待ちな。まだ依頼事項が残ってるんでね」
「まだ何かあんのか」
「あるよ。あんたにはイベントの宣伝をして貰わないといけないんでね」
「……宣伝? 他の奴は知らないが、俺はよそで友達作ったりなんかしないが」
眉間に皺ができあがっている。年若い青年の顔には、見た目からはかけ離れた苦悩が浮かんでいる。長命の人間特有のソレを特に色濃く浮かべる青年が子供のように見えて、美代はわずかに眉を下げた。
「この後、年4回に分けてブックイベントを開く予定さ。あんたにはその宣伝をしてほしい。宣伝と言っても、別に誘ってこいって訳じゃあ無いよ。単に『そういうイベントがある』って触れ回ってもらえれば十分さ」
龍童はわずかに思うところがありそうな顔をしたが、それぐらいなら、と渋々頷いた。
「それなら口の軽い情報屋にでも喋っておくよ。そっちの方が早い」
「やり方は任せるからなーんにも言わないよ」
「そうかい」
龍童は口の軽い褐色の男を思い浮かべながら、賑やかな事務所へ目を向けた。
島国は観光大国だ。逆を言えば、今のところそれ以外の資源はない。かつてはあったのだが、時間と共に資源はとっくに失われていた。観光大国として食いつないでいくのであれば、ただ持っているものをおいておくだけでは廃れていくだけだ。だから新しい『目玉』が必要なのだ。そのあたり、美代は非常に現実的な思考をする女であり、このイベントも彼女が発端なのだろう。
いずれにせよ――龍童には、関係のないことだ。
「それじゃあ適当にやっておくさ」
「はいよ。報酬はいつもどおりでいいかい?」
「ただ話をするだけで報酬なんかもらえるか」
「欲のない男だねえ」
イベント概要
- イベント期間はありません(常設イベント)
- 舞台:島国
- 作中時期:3月・6月・9月・12月
- 島国で年4回開催されるブックイベントに参加しよう!というイベントです。ブックイベントでは世界中の珍しい書物からありふれた書物、あるいは誰かが執筆した個人出版の本などが売りに出されます。
- 売り手として参加してもいいですし、ふらりと訪れてブックイベントをみて回るのもいいかもしれません。売り手として参加する場合は島国観光協会へ出店登録が必要になります。店の形式は「既に商業経営している店舗がイベントに参加する」場合と「指定場所にて露天を開く」の2択になります。
- イベント参加はノートのみでもOKです。
- このイベントにおいて、美代・龍童・ガスパレとの交流が可能です。
登場人物
美代
島国観光協会の古株の女性。今回の発起人。
龍童
旅人の男。色々と思うところはあるが、ブックイベント自体は悪くないなと思っている。なんなら普通に参加しているし買い物もしている。このイベントをガスパレに話して広めてもらった。
ガスパレ
情報屋の男。龍童から報酬をもらってブックイベントを広めて回った優秀な情報屋。
「つか俺様全然出番なかったんですけどぉ!!?? 呼んでくれよ龍童ちゃん! 俺とお前の仲だろ~!?」
「うっぜえな何の仲だよ。他人だろうが」
「ありゃりゃ、ふられちまったねえ坊主。ウザ絡みすっからだよ。反省しな」
「お前らなんで俺にたいして塩なわけ?」
「「日頃の行い」」

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